日大工 総合教育 樋口幸治郎
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今回の主な内容は, 1階非同次型線形微分方程式の解法を学ぶことである(教科書p40-50).
同次型の1階線形微分方程式 $$y^\prime+f(x)y=0$$ を解くと, $$\begin{align} &y^\prime+f(x)y=0\\ \underset{変形}{\Longrightarrow}&\dfrac{1}{y}dy=-f(x)dx\\ \underset{積分}{\Longrightarrow}&\log|y|=-\int f(x)dx+C_1\quad(C_1は任意定数)\\ \underset{変形}{\Longrightarrow}&y=\pm\exp\left(-\int f(x)dx+C_1\right)\quad(C_1は任意定数)\\ \underset{変形}{\Longrightarrow}&y=C\exp\left(-\int f(x)dx\right)\quad(Cは任意定数)\\ \end{align}$$ 故に, 同次型の一般解は $$y=C\exp\left(-\int f(x)dx\right)\quad(Cは任意定数)$$ で与えられる. (この右辺をさらに計算する場合, 積分の計算に積分定数は不要である. 何故なら, 上記の式変形で既に定数を添えて変形しているからである.)
定理 同次型の1階線形微分方程式 $$y^\prime+f(x)y=0\ の一般解を\ y_h=CH(x)\quad(Cは任意定数)$$とする. (上の話から$\displaystyle H(x)=\exp\left(-\int f(x)dx\right)$である. ) すると, 非同次型の1階微分方程式 $$y^\prime+f(x)y=g(x)\ の特殊解で\ y_p=C(x)H(x)\quad({}^\exists 関数C(x))$$ という形の特殊解が存在する.
非同次型の特殊解を求めるこの方法を $$定数変化法$$ という.
定数変化法を用いた非同次型の1階線形微分方程式 $$y^\prime+f(x)y=g(x)$$ の解法手順は次の通り:
1. 同次型$y^\prime+f(x)y=0$の一般解$$y_h=CH(x)\quad(Cは任意定数)\tag{1}$$を求める
2. 非同次型$y^\prime+f(x)y=g(x)$の特殊解を$$y_p=C(x)H(x)\quad(C(x)は関数)\tag{2}$$と置き, $C(x)$を求める
3. (1)の解$y_h$と(2)の解$y_p$との和$$y=H(x)(C(x)+C)\quad(Cは任意定数)$$が求める非同次型の一般解
次の公式は, 上記の定数変化法による解法手順を行うことで得られる. 公式は複雑なので, 上記の解法手順を覚え, その都度手順に沿って計算すると良いと思う.
定理(p41) 非同次型の1階微分方程式 $$y^\prime+f(x)y=g(x)$$ の一般解は, $$y=H(x)\left(\int\dfrac{g(x)}{H(x)}dx+C\right)\quad(Cは任意定数)$$ である. 但し, $H(x)=\exp\left(-\int f(x)dx\right)$, つまり同次型の解とする.
証明. $y_h=CH(x)$ ($C$は任意定数)は同次型の一般解である. 定数変化法より, 非同次型の特殊解を $$y_p=C(x)H(x)$$ と置いて, $C(x)$を求める. 非同次型の方程式に代入し, 変形していくと $$\begin{align} &\left(C(x)H(x)\right)^\prime+f(x)C(x)H(x)=g(x)\\ \underset{微分して整理}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)H(x)+C(x)(H^\prime(x)+f(x)H(x))=g(x)\\ \underset{H(x)は同次型の解}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)H(x)+C(x)\cdot 0=g(x)\\ \underset{変形}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)=\dfrac{g(x)}{H(x)}\\ \underset{積分}{\Longrightarrow}&C(x)=\int\dfrac{g(x)}{H(x)}dx\\ \end{align}$$ である. よって, $$y_p=H(x)\int\dfrac{g(x)}{H(x)}dx$$ が非同次型の特殊解である. 非同次型の一般解$y$は, 非同次型の特殊解$y_p$と同次型の一般解$y_h=CH(x)$との和であるから, 結局, $$y=H(x)\left(\int\dfrac{g(x)}{H(x)}dx+C\right)\quad(Cは任意定数)$$ が非同次型の一般解である.
以下では定数変化法で, 非同次型方程式を解く.
非同次方程式$y^\prime+y=x$の一般解を求めなさい. さらに, 初期条件$y(0)=1$を満たす初期値問題の解を求めなさい.
答.
同次型
$$y^\prime+y=0$$
の一般解$y_h$を求めると
$$y_h=C\exp(-x)\quad(Cは任意定数)$$
である.
次に, 非同次型
$$y^\prime+y=x$$
の特殊解$y_p$を
$$y_p=C(x)\exp(-x)$$
と置いて関数$C(x)$を求める.
非同次型の方程式に代入して変形していくと,
$$\begin{align}
&y^\prime+y=x\\
\underset{y=C(x)\exp(-x)を代入}{\Longrightarrow}&(C(x)\exp(-x))^\prime+C(x)\exp(-x)=x\\
\underset{微分して整理}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)\exp(-x)=x\\
\underset{等式変形}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)=x\exp x\\
\underset{積分}{\Longrightarrow}&C(x)=\int x\exp xdx\\
\underset{部分積分}{\Longrightarrow}&C(x)=x\exp x-\exp x\quad(特殊解でいいので積分定数は不要!)\\
\end{align}$$
よって, $y_p=\exp x(x-1)\cdot \exp(-x)=x-1$が非同次型の特殊解である.
非同次型の一般解$y$は, 同次型の一般解$y_h$と非同次型の特殊解$y_p$との和であるから,
$$y=C\exp(-x)+x-1$$
が非同次型の一般解である.
最後に, 初期条件$y(0)=1$を満たす初期値問題の解を求める.
条件から
$$1=C\exp(0)+0-1$$
であるから, $C=2$が求まる.
故に,
$$y=2\exp(-x)+x-1$$
が初期値問題の解である.
非同次方程式$xy^\prime+y=2x$の一般解を求めなさい. さらに, 初期条件$y(1)=2$を満たす初期値問題の解を求めなさい.
答.
同次型
$$xy^\prime+y=0$$
の一般解$y_h$を求めると
$$y_h=\dfrac{C}{x}\quad(Cは任意定数)$$
である.
次に, 非同次型
$$xy^\prime+y=2x$$
の特殊解$y_p$を
$$y_p=\dfrac{C(x)}{x}$$
と置いて関数$C(x)$を求める.
非同次型の方程式に代入して変形していくと,
$$\begin{align}
&xy^\prime_p+y_p=2x\\
\underset{y_p=\frac{C(x)}{x}を代入}{\Longrightarrow}&x\left(\dfrac{C(x)}{x}\right)^\prime+\dfrac{C(x)}{x}=2x\\
\underset{微分して整理}{\Longrightarrow}&C^\prime(x)=2x\\
\underset{積分}{\Longrightarrow}&C(x)=x^2\quad(特殊解でいいので積分定数は不要!)\\
\end{align}$$
よって, $y_p=\dfrac{x^2}{x}=x$が非同次型の特殊解である.
非同次型の一般解$y$は, 同次型の一般解$y_h$と非同次型の特殊解$y_p$との和であるから,
$$y=\dfrac{C}{x}+x$$
が非同次型の一般解である.
最後に, 初期条件$y(1)=2$を満たす初期値問題の解を求める.
条件から
$$2=C+1$$
であるから, $C=1$が求まる.
故に,
$$y=\dfrac{1}{x}+x$$
が初期値問題の解である.
1. 定数変化法とは, 同次型の一般解の定数を関数に変えて, 非同次型の特殊解を求める方法である.
2. 非同次型の1階線形微分方程式について, 定数変化法での解法手順を学んだ.
3. 教科書p41の定理2.3の公式は定数変化法で求まる.
次回はこれまで学んだことのまとめを行う.
教科書p45-46の練習問題17,18を解きなさい.