日大工 総合教育 樋口幸治郎
ホーム | 教室 | 研究室 |
---|---|---|
工科系数学I及び演習 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 | 26 | 27 | 28 | 29 | 30 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
平均値の定理を学び, 微分の符号と関数の増減の関係を導き, 増減表の作成方法を学ぶ(教科書p85-86,p89-107).
定理(p84) $a<b$とする. 連続関数$f(x)$について, $f(a)=f(b)$のとき, $$f^\prime(x)=0\quad(a<{}^\exists x< b)$$ が成り立つ.
説明. 連続関数$f(x)$は, 二つの数の間の範囲$a\le x\le b$に制限すると, 必ず最大・最小が存在する, という性質がある. しかも最大・最小のどちらか一方は$a<x<b$の範囲に見つかる. そのような$x$について, 点$(x,f(x))$でのグラフの接線は水平線である. すなわち, 接線の傾き$f^\prime(x)=0$となる.
定理(p85) $a<b$とする. 微分可能な関数$f(x)$について, $$\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=f^\prime(c)\qquad(a < {}^\exists c < b)$$
証明. 関数$F(x)$を $$F(x)=f(x)-\left(\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}(x-a)+f(a)\right)$$ と置く. すると, $$F(a)=F(b)=0$$ が簡単な計算で確かめられる. ロルの定理により $$F^\prime(c)=f^\prime(c)-\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}=0\qquad(a<{}^\exists c<b)$$ が成り立つ. 式変形すれば $$f^\prime(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}$$ である.
定理(p89) 微分可能な関数$f(x)$について,
証明. 例えば$f^\prime(x)>0$が成り立つ区間において, $f(x)$が単調増加でなければ, $a< b$で$f(a)\ge f(b)$となるはずだが, 平均値の定理から $$f^\prime(c)=\dfrac{f(b)-f(a)}{b-a}\le 0\qquad(a < {}^\exists c < b)$$ となって, $f^\prime(x)>0$が成り立つ区間で考えていることに矛盾する. 従って, $f^\prime(x)>0$が成り立つ区間において$f(x)$は単調増加である. 他の場合も同様に証明できる.
微分の符号を調べることで, 関数の増減の具合をまとめた表を増減表という.
$x$ | $\cdots$ | $a$ | $\cdots$ | $b$ | $\cdots$ | $c$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
$f^\prime(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ | $f(a)$ | $\searrow$ | $f(b)$ | $\nearrow$ | $f(c)$ | $\nearrow$ |
関数$f(x)$の増減表の作成手順:
1. $f^\prime(x)$を計算
2. $f^\prime(x)=0$となる$x$を全て求める (この時点で増減表の枠が決まる)
3. そのときの値$f(x)$の値を求める
4. 各区間での$f^\prime(x)$の微分を調べる
$f(x)=\dfrac{1}{3}x^3-x^2-3x+2$の増減表を作成しなさい.
答. $$f(x)=\dfrac{1}{3}x^3-x^2-3x+2$$ $$f^\prime(x)=x^2-2x-3=(x-3)(x+1)$$ $$f^\prime(x)=0\quad\iff\quad x=-1,3$$ $$f(-1)=\dfrac{11}{3}\qquad f(3)=-7$$ である. さらに, $$x<-1, 3<xの範囲ではf^\prime(x)は+$$ $$-1<x<3の範囲ではf^\prime(x)は-$$ まとめると
$x$ | $\cdots$ | $-1$ | $\cdots$ | $3$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$f^\prime(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ | $\dfrac{11}{3}$ | $\searrow$ | $-7$ | $\nearrow$ |
定義(p93) 増減表において, 「$\nearrow$」と「$\searrow$」の境目となる$f(x)$の値を極大, 「$\searrow$」と「$\nearrow$」の境目となる$f(x)$の値を極小という. 二つを合わせて極値という.
$f(x)=x^3-6x^2+9x-3$の極値を求めなさい.
答. $$f(x)=x^3-6x^2+9x-3$$ $$f^\prime(x)=3x^2-12x+9=3(x-1)(x-3)$$ $$f^\prime(x)=0\quad\iff\quad x=1,3$$ $$f(1)=1\qquad f(3)=-3$$ である. さらに, $$x<1, 3<xの範囲ではf^\prime(x)は+$$ $$1<x<3の範囲ではf^\prime(x)は-$$ まとめると増減表は下のようになるので, 増減表から$x=1$のとき極大値$1$を取り, $x=3$のとき極小値$-3$を取ることが分かる.
$x$ | $\cdots$ | $1$ | $\cdots$ | $3$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|
$f^\prime(x)$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ | $1$ | $\searrow$ | $-3$ | $\nearrow$ |
1. 微分の符号から, 関数の増減が分かる.
2. 関数の増減の具合をまとめた表を増減表という.
3. 増減表から極大・極小が求まる.
p92のAの6の中から2問以上解きなさい.
定義 接線の傾き$f^\prime(x)$が単調増加する関数$f(x)$のグラフは下に凸という. 逆に, 接線の傾き$f^\prime(x)$が単調減少する関数$f(x)$のグラフは上に凸という.
定理 $$f^{\prime\prime}(x)>0\quad\Longrightarrow\quad f(x)は下に凸$$ $$f^{\prime\prime}(x)<0\quad\Longrightarrow\quad f(x)は上に凸$$
関数$f(x)$の増減表について, $f^{\prime\prime}(x)$の符号の情報も加えた増減表を作成すれば, 関数$f(x)$のグラフの概形がより理解される.
次の関数の増減表を作り, 凹凸を調べよ: (1) $f(x)=x^3$ (2) $f(x)=e^x$
答. (1) $$f(x)=x^3$$ $$f^\prime(x)=3x^2$$ $$f^{\prime\prime}(x)=6x$$ $$f^\prime(x)=0\quad\iff\quad x=0$$ $$f^{\prime\prime}(x)=0\quad\iff\quad x=0$$ $$f(0)=0$$ である. さらに, $f^\prime(x)$の符号は $$x\ne 0の範囲ではf^\prime(x)は+$$ また, $f^{\prime\prime}(x)$の符号は $$x<0の範囲ではf^{\prime\prime}(x)は-, x>0の範囲ではf^{\prime\prime}(x)は+$$ まとめると増減表は下のようになるので, $x<0$の範囲で上に凸, $x>0$の範囲で下に凸となる.
$x$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|
$f^\prime(x)$ | $+$ | $0$ | $+$ |
$f^{\prime\prime}(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ | $0$ | $\nearrow$ |
(2) $$f(x)=e^x$$ $$f^\prime(x)=e^x>0$$ $$f^{\prime\prime}(x)=e^x>0$$ である. まとめると増減表は下のようになるので, $f(x)$で下に凸となる.
$x$ | $\cdots$ |
---|---|
$f^\prime(x)$ | $+$ |
$f^{\prime\prime}(x)$ | $+$ |
$f(x)$ | $\nearrow$ |
定義 凹凸も含めた増減表について, 凹凸が入れ替わる境界を変曲点という.
関数$f(x)=\dfrac{1}{4}x^4+x^3$について, 凹凸も含めた増減表を作成しなさい.
答. $$f(x)=\dfrac{1}{4}x^4+x^3$$ $$f^\prime(x)=x^3+3x^2=x^2(x+3)$$ $$f^{\prime\prime}(x)=3x^2+6x=3x(x+2)$$ $$f^\prime(x)=0\quad\iff\quad x=-3,0$$ $$f^{\prime\prime}(x)=0\quad\iff\quad x=-2,0$$ $$f(-3)=-\dfrac{27}{4}\quad f(-2)=-4\quad f(0)=0$$ である. さらに, $f^\prime(x)$の符号は $$x<-3の範囲ではf^\prime(x)は-, x>-3, x\ne 0の範囲ではf^\prime(x)は+$$ また, $f^{\prime\prime}(x)$の符号は $$x<-2,0<xの範囲ではf^{\prime\prime}(x)は+, -2<x<0の範囲ではf^\prime(x)は-$$ まとめると増減表は下のようになるので, $x<-2,0<x$の範囲で下に凸, $-2<x<0$の範囲で上に凸となる.
$x$ | $\cdots$ | $-3$ | $\cdots$ | $-2$ | $\cdots$ | $0$ | $\cdots$ |
---|---|---|---|---|---|---|---|
$f^\prime(x)$ | $-$ | $0$ | $+$ | $+$ | $+$ | $0$ | $+$ |
$f^{\prime\prime}(x)$ | $+$ | $+$ | $+$ | $0$ | $-$ | $0$ | $+$ |
$f(x)$ | $\searrow$ | $-\dfrac{27}{4}$ | $\nearrow$ | $-4$ | $\nearrow$ | $0$ | $\nearrow$ |
1. 2回微分の符号から関数の凹凸が分かる.
2. 増減表に凹凸の情報を書き加えることがある.
3. 増減表から変曲点が求まる.
教科書p106のAの8の中から2問以上解きなさい.